History Quest「戦史会議室」
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タイトル キプールの記憶:「特別部隊エゴズ」を捜せ
投稿日: 2004/08/04(Wed) 22:35
投稿者山田利道

アモス・ギタイ監督の「キプールの記憶」(イスラエル、2001年)をご覧になった方は、いらっしゃますでしょうか?
監督自身の体験に基づく、1973年10月の戦争、いわゆる「ヨム・キプール戦争」を題材にした作品なのですが、アラブ側の奇襲で幕開けした開戦当時の状況がさりげなく描かれています。
冒頭、主人公は友人と2人で自宅から車でゴラン高原に向かいます。
そして道すがら、所属部隊である「特別部隊エゴズ」を捜すのですが、見つからないので引き返し、途中で出会った軍医らと共に戦闘救難ヘリのクルーとして戦争に参加することになります。
なんか、すごくいい加減です(^^;)。
こうして主人公達は、途中で出会った仲間と共に、負傷者を後方に運び続けます(これが延々と続く)。
最後に主人公達の乗るヘリは撃墜され、自身が救助されることとなります。
そして「特別部隊エゴズ」は・・・結局最後まで物語には登場しませんでした(爆)。

それにしても「特別部隊エゴズ」とはなんぞや? 「エゴズ」とは指揮官の名前なのだろうか?
いろいろ調べてみると、これが実在の部隊であることがわかり、その正体も判明してきました。
まず、「特別部隊エゴズ」とは、「サイエレット・エゴズ(Sayeret Egoz)」と呼ばれる特殊部隊であること。
「Osprey Elite Series18 Israeli Elite Units since 1948」によると、1973年に解散するまで、イスラエル国防軍の北部軍直属部隊として、主にレバノンで対ゲリラ戦に従事していたようです。
ちなみに「エゴズ」とは人名ではなく、ヘブライ語で「胡桃」の意味だそうです。
インターネット上の別の資料では、北部軍に所属するゴラニ歩兵旅団所属の偵察隊となっています。
しかしゴラニ歩兵旅団には、正規の旅団偵察中隊として別の特殊部隊「サイエレット・ゴラニ」が存在するので、おそらく臨時に配属されていたものと考えられます。
実際にサイエレット・エゴズは、1956年に編成されて以来、解散や再編成を繰り返しているようです。
1973年の戦争における、この部隊の戦歴は、まったく不明です。
1956年〜1972年までの戦歴はだいたいわかったのですが、その後、1980年代に再編成されるまでの期間がブラックボックスです。
「1970年に解散した」となっているサイトもありますが、前述の「Israeli Elite Units since 1948」によれば、1972年のベイルート襲撃作戦(ミュンヘンオリンピックでの選手村襲撃事件に対する報復)には参加したことになっています。
いずれにせよ、1973年の戦争を扱うこの映画の中で登場するというのは、非常に興味深いことではあります。


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