History Quest「戦史会議室」
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タイトル Re^8: 1940のフランス軍の戦略構想
投稿日: 2005/01/28(Fri) 22:16
投稿者山家

 こちらに対するレスを怠っていましたので、とりあえず、こちらにのみレスします(もう一つの方は、一部レスしますが、明日、基本的には行います)。

まず、万一仏より講和を呼びかけてきた場合、その講和条件は、という点にまとを絞って反証していきますと、まず、独の究極の目的が対ソ戦にあり、対仏戦はいわば、それに備え後顧の憂いを絶っておく、いわば対ソ戦の前哨戦である、という位置づけについては山家様も異論無きようですので、その前提をもって独の考えうる戦略観より講和条件を分析していきたいと思います。

 それを当時の仏政府が信用していた、と述べた覚えはありません。もう一度、繰り返します。独のヒトラーの外交に信義は欠片もありません。日本に対する独の外交政策を少し調べただけで、それは自明のことです。対ソ戦に備えて防共協定を1936年に日本と結ぶ一方で、対日戦のために協力を求めてきた中国国民党に対し、対日戦指導のための軍事顧問団の派遣継続と戦車を含む大量の武器援助を行い、その独の援助を頼みの一つとして、中国国民党は日中間の全面戦争を決意しています。ちなみに、対日戦指導を行う独の軍事顧問団の撤収等を求める日本の度重なる要求はヒトラ−に公然と無視され、WWUの危機が公然と囁かれるようになり、独本国が最優先にされた1938年にようやく行われました。少し時期が前後しますが、このために、独ソ開戦時に、対ソ戦を最優先に考えていた筈の日本陸軍は対ソ開戦の準備が整わない羽目になりましたが、ヒトラーは自らのことを棚に上げ、対ソ戦準備が整っていない日本を同盟違反と非難したはずです。

 対独戦において十二分に勝機があると判断されているのに、このような独を信用して、仏は講和できるでしょうか。独が対ソ戦を準備するために講和したいというのは、信用できない、本当は対仏戦を最優先に考えているかもしれない、とむしろ疑うのが当時は普通ではないでしょうか。


> まず、若干?バーチャルな論理展開になってしまいますが、他の方も書いていらっしゃいますが、万一あの時点で仏が独と講和した場合、英国は黙っているでしょうか?私も一時の意見と違い、なんらかの軍事オプションをとってくる可能性が高いと思います。もし、その点に同意できるのであれば、独にしてみれば、戦わずして英仏の間を分断できる好機であり、また対ソ戦の観点からも、その時点で何らかの形で英仏間に軍事的緊張状態が生じている可能性が高いのならば、わざわざ軍事力を持って仏軍を撃破する必要はありません。そのような事態の予見出来ることに大きな論理的矛盾が見られない以上?独としてはこの機会を逃さないよう寛大な講和条件の提示が予想できるのではないでしょうか。

 上記のことから、仏政府が1939年から1940年当時、独は絶対に対仏戦争を今後起こさない、と信用できるとは思えません。後知恵を認めるべき、と主張されるのなら、話しは別ですが、寛大な講和条件を提示されても、仏の油断を誘うためでは、と疑いが先にたちます。それに寛大な講和条件、といわれても、ある程度具体的にどのような講和条件が提示されると考えておられるのか示していただかないと、議論の仕様がありません。私の考える独への寛大な講和条件は、最低でも、独はポーランドを独立国として復興させることです。

 それから、独が仏に対して寛大な講和条件を提示するとして、どの国が独仏の講和を仲介するのでしょうか。仲介国が中小国では、万が一、一方当事者が講和条約を破った場合、その破った当事者を制裁する等して、講和条約の履行を保証することができません。太平洋戦争において、日本が英米との講和に際し、ソ連による仲介に頼ったのは、ソ連ならば英米との講和条約を保証できると考えたからです。当時、英米は仏寄り、ソ伊は独寄りで、公正さを求められる講和の仲介国には不適当です。となると、独仏の直接交渉ということになりますが、仏首相自らベルリンに飛んだ時点で独に抑留され、最高指導者不在を狙って、独が停戦協定を破棄し、仏侵攻を再開しない、と仏政府は信用して、講和交渉を進められるでしょうか。

 前記のように対日政策一つ取っても、独の外交は信用できないのです。秘密裏にヴェルサイユ条約を破って再軍備をし、ラインラントに進駐し、オーストリア、チェコと併合した独を信用して、独打倒の勝算がまだまだあると考えている仏が講和を呼びかける、とは私にはどうしても思えません。勿論、後知恵を認めて、1940年にヴィシー成立といった屈辱を味合うのだから、それよりも仏は独を信用して速やかに講和しないといけなかった、と御主張されるのなら、私は、それを認めるのは吝かではありませんが、このような場合に、後知恵から考えないといけない、と言われるのには、どうにも違和感を覚えます。


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