タイトル | : Re: 36〜38年当時のドイツ軍の実力評価 |
投稿日 | : 2005/02/02(Wed) 22:00 |
投稿者 | : ウィリー |
こんばんは、ウィリーです。
ちょっと興味を引かれる話題だったので。
1)ヒトラーが政権を取ってからたったの5年、
それも、複葉機に豆タンクに高速戦艦しかない軍隊を
有力な軍隊と考えるのはかなり無理があるでしょう。
額面戦力だけ言えば、当時のポーランドの方が有力なぐらいです。
ドイツの将軍たちが、戦争するぐらいならヒトラーを倒した方がまし、
と考えたとしても驚くには当たらないでしょう。
2)ドイツ軍が崩壊し、ヒトラー政権が倒れて、ドイツが混乱状態に陥った場合、
治安維持のためだけにフランスは総動員が必要でしょう。
このあたり、イラク軍を崩壊させ、フセイン政権を倒しても
予備役を動員してさえイラクの治安維持に困難を覚えている
米軍を見れば、フランス軍が何をおそれたか理解できると思います。
たちまち、彼らは、ルール占領の時のサボタージュによって
大やけどした経験を持っているのです。
3)ミュンヘンの時に開戦していれば、世界は
「ソ連がポーランドに侵攻し、ハンガリーがチェコスロバキアと
ルーマニアに襲いかかり、ユーゴスラビアがハンガリーに攻め込み、
ブルガリアがルーマニアを攻撃、ソ連がルーマニア経由でチェコへ進駐し…」
という、訳のわからない世界大戦へとなだれ込んで行ったでしょう。
#ソ連がチェコを救援しようとするだけでこの程度の玉突き現象が起きる。
実にこのことこそ、英仏がドイツとの開戦をおそれた最大の理由だと思われます。
当時のヨーロッパ地図は微妙なバランスの上にのっかっていて
(事実、ソ連邦崩壊によってバルカンの火薬が爆発した)
衝撃を加えればすべてを吹きとばしかねない要素はあったのです。
−−−
実際のドイツ軍の戦力がどの程度であったのかは微妙な問題です。
しかし、本当の問題は、当時のヨーロッパは、
小規模の武力衝突でさえ、ヨーロッパ全体を吹き飛ばす大戦争に
つながりかねない不安定さを抱えていた、ということなのです。
皮肉なことに、独ソ不可侵条約によって問題はきわめて単純になり、
英仏とドイツは気兼ねなく戦争出来るようになりました。
英仏にとっても、ドイツの崩壊が、共産主義勢力がライン川まで
やってくることを意味しなくなれば、
ドイツ相手の戦争がやりやすくなるわけです。
「戦争が可能な領域は限定された」という
モロトフの台詞通りの状況が生まれたわけです。
まあ、その「ドイツ崩壊をおそれて腰砕けになった」
英仏の態度を「ドイツの力をおそれた」と誤解したことで
ヒトラーの判断は的はずれになっていくわけですけど、
それはまた別の話でしょう。