”VICTORY”への追加ユニット・ルールの導入効果 窪田好男

はじめに: 以下の文章はもともと「シミュレーションゲーム共用掲示板」でAMIさんからいただいたご質問におこたえすべく書いたものですから表現等におかしな点がありますがご容赦願います。

 まず確認ですが、エリート・ブロックセットのうち、ある程度のユニットは追加マップを使用することが前提となっているように思います。エリート・ブロックセットに含まれるユニットのうち、重巡ユニットや駆逐艦ユニットは、MAP78 9 10のように海が過半を占めるマップの追加にともない、海軍ユニットが12ユニット(海兵隊ユニットを含めても16ユニット)ではゲームにならないということで導入され、中爆ユニットと雷撃機ユニットは強化された海軍ユニットへの対抗策として導入されたように思います。また、資源ユニットは基本セットのマップでは使いようがありませんし、工兵ユニットの飛行場能力もマップの選択によっては都市・町の配置の関係上、一方の側が決定的に有利となること(追加マップを導入した場合よくあることです)を防ぐために導入されたと思われます。

 前置きが長くなりましたが、エリート・ブロックセット導入の効果は以下の2点に要約できると思います。

1.ユニットの種類増加による不確実性の増大
 “VICTORY”の売りのひとつは、ユニットの種類とステップ数に常に不確実性があり、ゆえに態勢が整わない相手には電撃戦や戦略的・戦術的奇襲が可能なこと(にもかかわらず電撃戦や奇襲で勝利条件を満たすことは困難で、結局のところは消耗戦となり、戦闘において自軍が受けた損害以上を敵軍に与え続けた側が勝つ:第二次大戦の本質)にあるわけですが、基本セットだけでは慣れてくればだいたいの推測がつくようになります。例えば、戦線後方2ヘクス以内の都市に置かれたユニットはたいてい戦闘機か急降下爆撃機でしょう。ここまで単純でなくとも、陸・海・空軍のいずれかぐらいは推測できますし、そこまでわかればあとはいずれの軍も3・4種類しかないわけですから、対処策を考えることも比較的容易です。ところがエリート・ブロックセットの導入でユニットの種類が飛躍的に増えれば推測すべき要素もまた急増します。結果的にプレイヤーのどちらかがミスを犯し戦勢が逆転する確率が上昇します(あるいは推察力の高いプレイヤーの勝率が高まる?)。

2. ユニットの数の増大による優勢側のPPの有効活用
 “VICTORY”では一度都市を奪われPPで不利となった側が逆転することが困難です。しかし、防御側有利の戦闘システムにより、優位に立った側が勝利条件を満たすには長時間のプレイが必要とされます。すると必然的に両軍ともほぼ全てのユニットを生産し終えることになります。その際、基本セットだけだと、決戦場(たいていは都市)で相対するユニットとその戦力という点では優勢側も劣性側も互角という事態がしばしば発生します。優勢側はせっかく獲得したPPの優位を戦局の現況では有効に活用できないユニットの生産に浪費せざるをえない場合がでてくるのです。そうした場合の例として、戦局の焦点が内陸にあるにもかかわらず、優勢側の生産/補充可能なユニットが海軍しか残っていないというのがわかりやすいと思います。エリート・ブロックセットの導入はこの点を劇的に変化させます。優勢側は費用も戦力も高いがジェット戦闘機ユニットやエリート戦車ユニットを戦場に投入したり敵軍より多数のユニットを戦場に投入するなどPPを有効に活用することができるようになります。

 なお、個別のユニットについて思いつくままに導入の効果を挙げてみます。

・補給ユニットにより攻勢の継続が容易となり攻撃側が有利となった。

・資源ユニットにより重爆ユニットの有用性が高まった。また、VICTORYの要訣はPPで敵より優位に立つことに尽きるわけだが、基本セットでは、PPで敵の優位に立つには、戦闘で自軍の損害以上の損害を敵軍に与える以外の方法がなかった。エリート・ブロックセットにおける資源ユニットの登場により、資源ヘクスを包囲または封鎖するという方法が新たに加わった。

・移動力以外の点では高いレベルでバランスのとれた砲兵ユニットにより防御側が有利となった。

・戦車ユニットと同等の移動力をもち、かつ反応移動能力をもつ機械化歩兵ユニットにより、攻撃側は戦車ユニットに追随可能な支援ユニットを手に入れ、防御側にとっては従来は戦力の無駄遣いに過ぎなかった1ユニットで戦線を張ることの有効性が高まった。

 エリート・ブロックセット導入の効果は以上のようなものですが、これらは基本的にもう一つの追加セットであるロジスティクス・ルールにもあてはまります(ロジスティクス・ルールを導入すると戦略爆撃機の用途が広がり有用性が高まります)。総じて追加ユニット・ルールの導入は”VICTORY”のプレイアビリティをさほど下げることなく、シミュレーション性をちょっぴり高め、何よりプレイの楽しみを倍加させてくれます。かつてクロス・オブ・アイアン以降のスコードリーダー・シリーズが本質を変化させていったのに対し、追加ユニット・ルールを導入しても、シンプルなルールで第二次大戦の本質をシミュレートするという”VICTORY”の本質は何ら変わりません。とはいえ、3回に2回くらいは基本セットのユニットと追加マップだけでプレイする自分がいたりすることも申し添えておきます。シンプル・イズ・ベストということもありますが、ずぼらで几帳面な私は使い終わったユニットを基本セットとエリートセットに分けてジップロックに収納するのが面倒なんです。ましてやロジスティクス・セットのマーカーに至っては!!

 やはり思い入れが強いのか(単に本業からの逃避かも…)、長文になってしまい恐縮ですが、ご参考になれば幸いです。

  

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