「信長最大の危機」今後のシリーズ展開について
ふゅーらー中村
昨年の秋にGJ49号付録として出版して頂きました「信長最大の危機」は、おかげさまで多くの方に楽しんで貰えて、制作者としては大変感激しております。
さて、「信長最大の危機」は希望が多ければ今後シリーズ化していきたいと考えています。
今回TSSさんのご厚意でホームページにスペースが頂けましたので、今後の予定(あるいは希望)等をご紹介させていただきます。
現在のところあがっているラインナップは以下のものがあります。
「秀吉最大の賭け」天下統一キャンペーン
本能寺直後から開始して小牧長久手の戦い前後まで、地域的には「信長・・・」とほぼ同一地域で「信長後継者(信長ズ・ディアドコイ)戦争」を再現する予定です。
最大の問題は、「二人プレー」用のSGとして作るか、「4人プレー」のSGとして作るかと言う点です。
「二人プレー」の利点は、プレーしやすい点です。プレーヤーを二人集める方が4人集めるより容易であることは言うまでもありません。「信長・・・」が多くの方に手軽にプレーして頂けるようになった大きな理由も、プレーが容易な「二人ゲーム」であったことが大きいと考えられますから、これは非常に重要なファクターであると思われます。
一方「4人プレー」の最大の利点は、「シミュレーションとして最も自然である」と言う点に尽きます。「信長・・・」の場合は、多くの敵対勢力は同時に、そして連携をとって動いていたため「同一の陣営」と見なすことにさほど不自然さはありませんでしたが、「秀吉・・・」の場合は秀吉の敵対勢力同士が相互に敵対する可能性(例えば「本能寺」直後の状況は「秀吉VS全他勢力」というより「光秀VS全他勢力」と言う側面)の方が強く、仮に光秀が生き残っていたら秀吉と勝家や家康が連携して光秀に当たると言う可能性の方が遥かに高いものでした。
したがって本能寺以降の状況は本質的に「秀吉、光秀、勝家、家康」と言った四大勢力(プラス丹羽、信雄、信孝等中小勢力)中心の戦いであり、これらを「秀吉対反秀吉」といったかたちで強引に2陣営に分けることは、色々な点で矛盾が現れかねない恐れがあります。
また、「内線対外線」と言うシチュエーションも、「信長・・・」がゲームとして面白くなった大きな要因だと思いますが、秀吉の天下盗りの戦いに於いては本当の意味で「内線対外線」と言うシチュエーションになったことはほとんどなく、この期間中毛利軍が好意的中立を守っていたことは、秀吉方に非常に有利な材料でした。
まあ毛利が参戦する可能性はゼロではなかったと思いますが、「ヒストリカルゲーム」である以上あまり高ければゲームが滅茶苦茶になってしまいますので、「内線対外線」と言うシチュエーション的には「信長・・・」に及ぶことはなかなか難しいと思います。
何か悪いことばかり書いてしまいましたが、従来同テーマのゲームがほとんどなく、非常に人気の高いテーマであることもあり、「信長・・・」を別にすれば楽しめるゲームにはなると思いますので、要望が大きければぜひ実現させたいと考えています。
「秀吉の夢?それとも悪夢?」文禄慶長の役キャンペーン
実現すれば日本初、いや恐らくは「世界初」となるこの企画は、E社の「朝○戦争」が発売停止になって以来、朝○ネタはこれまタブーとされてきましたが、良く考えてみるとこれは奇妙な話なのです。
その理由は、「悪辣な日帝が朝○人民の抵抗を圧殺」する過程を再現することが目的のSGであれば、この様な受けとめ方をされても仕方がないかも知れませんが、「悪辣な倭人の侵略行為を正義の朝○人民が見事撃退」する過程を描写したテーマであって、その意味では寧ろ望まれても不思議ではないテーマなのではないでしょうか。
まあこの辺は、本当の所はどうかというのはいざその時になってみないと判らないのかも知れません。それよりむしろ「ユーザーが望むテーマ」でなければそれ以前の問題ですから、現時点では実現可能性は五分五分といったところでしょうか。
ただし、良く検討してみるとこのテーマは従来の日本史ゲームにない興味深い問題を内在しているのです。
たとえば独ソ戦ゲームの大きな魅力の一つとして、「異質な軍隊同士の戦い」と言う要素を挙げて良いと思いますが、この「異質な勢力の衝突」と言う要素は、将棋などのコンフリクトホビーと比較した場合に、ボードSLGを特徴づける極めて大きな魅力となっていると思われます。
「信長・・・」の場合は、兵農分離が進んだ機動力のある近世的な織田軍、農民兵中心で精鋭だが機動力と指揮の統一で弱点を抱える中世的な反織田陣営、武士とは異なる組織原理に基づく狂信的な一向一揆軍と言ったように、各陣営、大名家ごとに異なるキャラクター性が大きな特徴の一つになっていましたが、たとえば「関ヶ原」はあまりにも有名な戦いである割には、後述しますがこの点に於いてはあまり魅力的なテーマではないのです。
というのは、「関ヶ原」の場合は石田三成、真田昌幸/幸村父子、大谷義継など個々の武将の活躍は有名なのですが、「信長」の場合と違ってすでに秀吉の統一政権下の共通の軍役体系下に入っていた諸侯の間には、各大名家の「異質性」はさほど明確なものではなくなりつつありました。
ところが、「文禄慶長の役」の場合は異民族同士、すなわちまさに異質の軍隊同士が合いま見えるわけで、その意味で隠れた興味深いシチュエーションであるということができます。
例を挙げると、正規兵は質量ともに弱体な一方、どこに雲霞のように湧き出てくるかわからない義兵(「信長」でいうところの全軍一向宗の様なものか)が主力になる朝鮮軍、歩兵中心だが戦慣れした精鋭ぞろい、しかし補給に苦しむ日本軍、日本にはない兵科「オール騎兵」主力の明軍と言ったように、各国別の鮮やかなコントラストを描くことが可能になるでしょう。
また、後の関ヶ原戦役で活躍する武将の大半が従軍しており、その意味で登場する武将のラインナップ的には関ヶ原戦役にはさほど引けはとらないでしょう。
以上のように、一見地味な戦いながら、興味深い要素が数多くあるので、できれば実現させたいテーマです。
「家康の野望」関ヶ原キャンペーン
多分日本の全歴史を通じてもっとも有名な戦闘ではないでしょうか。
西軍の伏見城攻撃から始めて、東軍の小山からの反転、そして濃尾平野における決戦までを含む予定です。
しかしながら、先に述べた問題以外にいくつか問題があります。
第1はマップが再現する戦域の問題で、「信長・・・」の場合は信長の版図が広がり、戦場が拡大するに連れて、ちょうど上手い具合にマップのほどんど全域をまんべんなく使用するのに対して、「関ヶ原・・・」では九州は別にしても主戦場になった濃尾平野、それに東北地方の間には軍隊の機動にのみ用いられた東海道、中仙道沿いの広大な地域があり、この間の「戦略機動」中心のマップの作りにすれば、ごく一部の地域以外は通過に使われるだけの無駄な面積になってしまい、一方戦場となった地域における「作戦機動」中心のマップの作りにすれば、戦略機動に用いられた地域はマップに入らなくなってしまうという問題が残ります。
まあ作戦マップ2枚を戦域ボードで結ぶという方法も考えられますが、「信長・・・」システムの特徴である全版を同スケールの街道マップで再現するという点は出来れば変えずに済ませたいと思います。
第2に、戦略選択肢として東軍主力が小山の集結地から濃尾平野の決戦場に機動する以外の選択がないワンパターンになりがちで、東奔西走毎回千差万別の目まぐるしい展開を見せる「信長・・・」の場合と比べてゲーム展開的にも大きな違いがあります。(こうやって書いていくと「信長・・・」がデザイナーの力などではなく如何に奇跡的偶然が重なった結果出来たゲームであるということが良く判るような気がします)
これらの問題を如何に解決、あるいは昇華させていくかはいまのところ全く白紙の状態です。
予定ではシリーズの最終作になる筈なのですが、それまでとゲームジャーナルの命運と筆者の気力とユーザーのご支持が続いているかどうかに依存しているので、結果は神のみぞ知るといったところでしょうか。
以上、制作者が怠け者なため、上記3点以外には当面製作するつもりはないので、万一これ以外にも戦国もの(戦国ものでなくても可ですが)SLGを作って欲しいという方、あるいは作りたいと言う奇特な方がおられたら、ゲームジャーナルの編集部まで一報されたら如何でしょうか。(^^;)