8月23日のTSS例会にて,奉天会戦(コマンド日本版#16)をプレイしたので報告をいたします。


 まず,最初のプレイは私がロシア,KI氏が日本でした。しかしながら,KI氏はACROSS FIVE APRILS(VG)の流れを汲むこのゲームのシステムに慣れておらず,序盤の攻撃失敗で相当な兵力を失い,4ターン当たりには露軍はほぼ直線の強力な防衛線を引いてしまったので,取り合えずゲームはここまでとしました。

 再戦はKI氏がロシア,私が日本でプレイしました。

 第1ターン,第4軍の一部は奉天前面の陣地から離れることが出来たものの,第2軍が移動する前に日本の戦闘チットを引いてしまい,大損害を受けてしまいます。また,第3軍前面の突出していた露軍騎兵も,第3軍が包囲する前に移動チットを引いたため,後方で戦線を引くことに成功しました。その後日本軍は第1軍を東方にシフトして,援軍が来る前に高地の突破を図ります。

第1ターン

 ところが,第2ターンの日本軍攻撃チットを引く前に,大半の露軍は移動してしまい,西方では後退を行い,東方では陣地の強化を行います。そのため,日本軍は平地では何らの損害を与えることが出来ず,陣地戦では大損害を被ります。特に東方では,このため露軍の援軍の到来する時間が稼げ,東方での突破は事実上不可能となっていました。

 それでも第3ターンに空いた穴に,しゃにむに第3軍と第2軍を突っ込み,これに自軍攻撃のチットでマストアタックを強いられることを怖れたロシア軍は後退を開始します。

 第4ターンも同じ様な展開が続いたのですが,第5ターン,日本軍の戦線中央の部隊が西方に次々に引き抜かれるのを見て,露軍は遂に中央部にて限定的な反撃を開始します。

第4ターン

 しかし,このため戦線最東方では兵力不足となったのでしょうか,第6ターン東方にて遂に修復不可能な穴が発生し,秋山騎兵旅団は新民府まで駆け抜けます。露軍も対応移動しますが,このターンは大混戦となったため,10を越える多くの露軍が包囲されてしまいます。
 とはいえ,実はこの情勢は日本軍にとっても楽観できるものではありませんでした。被包囲下の部隊は1:2〜1:1の低比率攻撃を余儀なくされている状態でしたが,逆に言えば日本軍の攻撃チットが引かれれば,同様の状態に日本軍が追い込まれることを意味します。また,第4軍は崩壊寸前です。

第6ターン

 果たして,第7ターン,露軍が第4軍に接敵した後,日本軍攻撃チットが引かれ,日本軍の包囲部隊の多くは退却を強いられ,第4軍は殆ど壊滅し,日本軍は投了の憂き目にあいました。


 このゲームはご存じの通りACROSS FIVE APRILS(以下A5Aと略す。)の流れを汲んでいます。既に定評があるシステムを参考としたため,ゲームもなかなかの完成度を持っていると言えます。

 ただし,A5Aのランダムチットは,南北戦争時の両軍の指揮統制能力の低さから導入されたとよく言われますが,これが帝国主義国家の先兵の戦いである日露戦争にも当てはまるかどうかは定かではありません。
 まぁ,奉天会戦が流動的な戦いならば,それなりの意味があるといえるでしょう。

 また,A5Aは戦闘ラウンドがランダムなチット引きに左右されます。マストアタックで,攻撃側不利なシステムから導かれる作戦は,「自分の攻撃チットが引かれて,相手の攻撃チットがまだ引かれていなければ,相手に張り付いて,マストアタックで自滅してもらう。」です。A5Aでは存在した,攻撃側の自発退却が無くなったこのゲームでは,むしろこの戦法は有効になったと言えるかもしれません。防御に有利なようにと,高地とか川とかの防御拠点で守っているところに,敵に隣接されて攻撃チットを引いてしまうと,余計不利な自滅攻撃を強いらされ,なかなか悲しいものがあります。
 南北戦争では,火力の増大に比較して攻撃戦術が未発展にも関わらず,無謀な攻撃が行われたので,これを再現するものだとも考えられます。ただ,このような状況が日露戦争にも当てはまるかは定かではありません。
 もっとも,流動型の戦闘結果表のため,A5Aほど惨いことにはならないので,これはこれで良いのかも知れません(余談ですが,A5Aの戦闘結果表の1の結果がMCに,1RがRに,2Rが1Rになったと思ってもらってほぼ間違いないです。)。

 A5Aでは一度動いた部隊は同ターンには絶対動きません。また,戦闘も同じターンには再発しません。このことは,ゲームのサスペンスを失うと同時に,交互移動の問題の発生を少なくするという効果もあまり得られなくなっているように感じられます。
 とはいえ,麻雀で捨札を読むように,ある程度今後の展開を頭で組み立てられるようになるため,これはこれで面白い状態になるとも言えます。

 何れにせよ,以上述べた点はある程度A5Aに内在する問題ですし,多分に自分の好みなので,批判するには当たらないかも知れませんね。


 全体的なシチュエーションとしては,ロシアが内線,日本が外線で,両軍とも十分な攻撃能力があるので,楽しめるかと思います。中央に強力な陣地があって,攻撃側は両翼から包囲を図り,陣地内ではマストアタック免除,防御側もある程度反撃できるということから,私はパットン第3軍(SPI/HJ)を思い出しました。

 リサーチについては私は門外漢なのでよく分からないのですが,閑院宮は早い時期に田村に指揮権を渡していたのではとか,田村・秋山騎兵旅団は会戦開始してから早い時期に統合して秋山支隊となっていたので,両旅団とも第3軍所属にした方が,ゲーム上の表現としては的確ではないか,と言う意見もありました。
 ついでに言うと,ヒストリカルノートで瀬戸利春さんが第3軍にを強化すべき旨主張されていましたので,それがゲームで検証できると良いと思ったのですが,フォーメーションが重視されるこのシステムでは難しいでしょうね。所属の変更なんて面倒だし,(^_^;)

 ゲームとしては,機関銃効果が,ゲームに意外性の効果を与えています(日本軍で6回連続でZOC突入失敗したときは泣きましたが。(^_^;))。ただ,モラルチェックもそうですが,サイコロを振る機会が多いのは,ちょっと面倒に感じました。

 また,第1ターンのチット引きによっては,第3軍が前面の露軍騎兵3個を包囲したり,逆に第2・4軍が露軍陣地から離れられず,大損害を受けることがあります。これは,プレイヤーの人智の介入できない,只の運によってその後の展開が大きく左右されることを意味し,競技用ゲームとしては問題だと思います。むしろ,そのような史実の結果が起こった時点から,ゲーム開始とした方が,ゲームとしては楽しめたように思います。
 もっとも,展開がその都度代わるので,これはこれで変化があって良いのかも知れません。

 ルール構成としては,ディベロッパーのプレイ・レポートに依りますと,このゲームはルールの覚え易さに拘ったのだそうです。確かによく練られているとは思います。しかし,戦闘力が半減する場合は端数切り上げで,移動力が半減する場合は端数切り捨てというのは,忘れやすいルールだと思います。また,砲兵と他の兵科の移動力消費が異なっていますが,出来れば統一できればよりプレイアビリティも上がるかと思います。

 色々書きましたが,逆に言うとこの程度しか粗は目立ちませんし,多分に自分の好みではあります。とにかく,理屈抜きで楽しめる作品だと思いますし,奉天会戦のゲームなどあまりありませんから,一度やってみる価値はありそうです。

YEN      

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