陸上戦艦−Land Ship

 第1次世界大戦で使われた新兵器の1つが戦車であることは言うまでもないでしょう。その後も戦車は陸上兵器の花形として今日でもその威容を誇っています。
 西暦1920年まで英・仏・独で開発された戦車の紹介をいたします。1920年までとした理由は、この年までにプラン1919で使用が予定されていた戦車の大部分が実用化されていたことと、20年代以降はビッカースMk.Iの様なより実用性の高い戦車が登場し出すからです。

1 イギリス

リンカーン・マシーン
 ウイリアム・トリットンとW.G.ウィルソン海軍大尉が設計した戦車で、トリットン・マシーンとも呼ばれました。米国のブルロック装軌式車両がベースになっています。履帯に故障が多かったため、実用性はあまり高くありませんでした。
 重量14トン、乗員4〜6名、速度5.63Km/h

リトルウイリー
 幅1.5mの超壕性と高さ1.36mの超堤性を満たすべく改修された戦車です。履帯にも改良が加えられ、その後の戦車の足廻りの礎となりました。
 諸元はリンカーン・マシーンと同じ

マザー
 重心が高く不安定で、塹壕を越えるには履帯が短すぎたリトルウイリーの改良として、履帯が車体全周を覆うように取り付けられた戦車です。重心を下げるために火砲は砲塔には搭載されず車体側面に張り出したスポンソンに搭載されました。砲は海軍の6ポンド砲を装備しました。後のイギリス重戦車の基本となった戦車です。
 重量28トン、乗員8名、6ポンド砲x2、機関銃x4、速度5.95km/h

Mk.I戦車

Mk.I戦車
 マザーを元に作られた戦車で装甲は鋼板に変更されました。その他実戦向けの改修を受け1916年のソンム会戦に姿を現しました。この戦車には6ポンド砲を装備して砲撃を行う雄型と、機関銃を装備して敵歩兵の攻撃から援護する雌型の2種類がありました。また無線機を搭載した派生型も作られています。
 重量28トン(雄型)、27トン(雌型)、乗員8名、6ポンド砲x2+機関銃x4(雄型)、機関銃x5(雌型)、装甲厚6〜12mm、速度5.63km/h


Mk.II戦車
 Mk.Iに各種改良が施された戦車です。
 諸元はMk.I戦車と同じ。

Mk.III戦車
 Mk.IIの装甲が若干強化された戦車です。
 諸元はMk.I戦車と同じ。

フライング・エレファント
 野砲の直撃に耐えるべく装甲が強化された戦車で、重量は100トン近くになりました。これに伴って低下する不整地突破性能を上げるべく、補助履帯が2組装着されました。本車の生産は、Mk.Iの生産を優先するために取り消されています。
 重量90〜100トン、乗員8名、6ポンド砲x1、機関銃x6、装甲厚50〜75mm

Mk.IV戦車
 それまでの戦車に実戦経験による改良を加えた戦車です。スポンソンは小型化され地面よる干渉が少なくなり、6ポンド砲は短砲身化され旋回範囲が広くなりました。燃料タンクは火災を避けるため後方に移され、装甲が施されました。履帯にも改良が施されています。排気口には消音器が付けられ、冷却装置と換気装置も付けられ居住性が向上しました。この戦車には車体を延長した改良型やクレーン車等の派生型が作られました。
 諸元はMk.I戦車と同じ。

Mk.V戦車
 今まで2人で操作していた変速機が1人でも扱えるようになり、エンジンも高出力なものとなりました。視察性も良くなっています。また、装甲も若干厚くなりました。
 重量29トン(雄型)、28トン(雌型)、乗員8名、6ポンド砲x2+機関銃x4(雄型)、機関銃x6(雌型)、装甲厚6〜12mm、速度7.4km/h

Mk.V*戦車
 Mk.Vの車体を1829mm延長した戦車です。
 重量33トン(雄型)、32トン(雌型)、その他の諸元はMk.V戦車と同じ。

Mk.V**戦車
 操縦席後方に車長用キューポラが設置され、より視界が良くなりました。この戦車には架橋戦車や地雷処理ローラー装着車等の派生型があります。
 重量35トン(雄型)、34トン(雌型)、その他の諸元はMk.V戦車と同じ。

Mk.V***戦車
 Mk.V**の改良型です。モックアップのみ作られました。

Mk.VI戦車
 Mk.Vより計量高速の戦車として設計されましたが、モックアップ製造に止まりました。

Mk.VII戦車
 Mk.Vの車体を914mm延長し、変速器にも改良が加えられました。この戦車は1両のみ生産されました。
 重量33トン、速度6.43km/h、その他の諸元はMk.V戦車と同じ。

Mk.VIII戦車

Mk.VIII戦車
 今までの戦訓から、実用性を高められた戦車として登場したのがこの戦車です。強化されたエンジンは戦闘室とは隔壁で隔たれ、排ガスの侵入が無くなり居住性が向上しました。主砲塔上には車長用キューポラが置かれ、良好な視界を確保しています。この戦車は英米が共同で1500両生産し、仏軍も含めて大量配備される予定でしたが、第1次大戦の終結により、生産計画は頓挫しました。その他に車体を延長したMk.VIII*が計画されていました。
 重量37トン、乗員12名、6ポンド砲x2+機関銃x7、装甲厚6〜16mm、速度10.4km/h


Mk.IX戦車

Mk.IX戦車
 歩兵50名または補給品10トンを輸送する輸送専用車両。200両発注されるも、結局大戦に間に合ったのは3両でした。APCの先祖と言えるのかもしれません。水陸両用に改良された試作車も作られました。
 重量27トン、乗員4名、機関銃x1、装甲厚6〜10mm、速度5.39km/h


Mk.A中戦車
 別名ホイペット戦車。高速騎兵戦車として作られました。エンジンを2機持ち、それぞれ独立した変速器によって履帯を動かし、高い機動性を誇っていました。
 重量14トン、乗員3名、機関銃x3または4、装甲厚5〜14mm、速度13.3km/h

Mk.B中戦車
 車体形状は重戦車のように菱形に戻りました。450両生産予定でしたが、45両が完成したところで大戦が終了しました。なお、2ポンド砲を積んだタイプも存在します
 重量18トン、乗員4名、機関銃x4、装甲厚6〜14mm、速度9.81km/h

Mk.C中戦車
 車体形状はMk.B中戦車のような菱形です。450両生産予定でしたが、48両が完成したところで大戦が終了しました。改良型換気装置や、通話官の装備により完成度が高まりました。なお、6ポンド砲を積んだタイプも存在します
 重量20トン、乗員4名、機関銃x4、装甲厚6〜14mm、速度12.7km/h

D中戦車

D中戦車
 1919年に計画されていた攻勢のため、速度32.1km/h、航続距離322kmの戦車が要求されました。これに応えるべく設計されたのがこの戦車です。改良されたサスペンションと履帯により、高速性能を発揮する予定でした。6ポンド砲を搭載するタイプも予定されていました。しかし、機械的欠陥があったため戦後登場したビッカースMk.Iに主力戦車の座を奪われました。
 重量20トン、乗員3名、機関銃x3、装甲厚8〜10mm、速度37km/h


 

2 フランス

シュナイダーCA.1突撃戦車

シュナイダーCA.1突撃戦車
 ホルヒ社の装軌式牽引車を基にシュナイダー社のウジェーヌ・ブとJ.E.エティエンヌ陸軍大佐が設計した戦車です。CAとはChar d' Assaultすなわち突撃戦車を意味します。車体左側面には75mm砲を装備し、サスペンションは直立コイルスプリングでした。400両が生産されました。なお、後期型では燃料タンクが増量と装甲が強化がなされています。
 重量13.5トン、乗員6名、75mm砲x1+機関銃x2、装甲厚11.4mm、速度5.95km/h


シュナイダーCA.2突撃戦車
 車体左側面の75mm砲を廃し、上面に47mm砲を装備した旋回式砲塔を備えていました。1両のみ生産されました。

シュナイダーCA.3突撃戦車
 上面にキューポラを2つ装備し、車体前面に機関銃を2挺装備しています。車体後部も延長されました。

サン・シャモン突撃戦車

サン・シャモン突撃戦車
 ホルヒ社の装軌式牽引車を2組連結した実験車両が原型です。リメイロー陸軍大佐が設計し、シュナイダー戦車と同じくスプリング式のサスペンションを持っています。この戦車の特徴は発電器とモーターを持つ電気駆動であったことですが、実用性は高くありませんでした。また、履帯の短いこの戦車は不整地突破能力に問題がありました。400両が生産されています。なお、初期型はサン・シャモンTR砲が搭載されていますが、改良型は1897年式野砲が搭載されています。
 重量23トン、乗員9名、75mm砲x1+機関銃x4、装甲厚11.5mm、速度8.52km/h


ルノーFT

ルノーFTシリーズ
 ルノーとセレが設計した戦車です。FTとはFaible Tonnage(軽量)を意味します。この戦車は世界で初めて全周回型旋回式砲塔を搭載した戦車で、実用性が高く、大量生産されました。第1次世界大戦の最優秀AFVといって良いでしょう。各社の多くの工場で生産されたため、色々なバリエーションが見られます。また、派生型も多く作られました。この戦車は各国に輸出され、各国に大きな影響を与えています。第2次世界大戦中も仏軍は大量のこの戦車を保有していました。プトー37mm砲を搭載した戦車も作られています。
 重量6.5トン、乗員2名、機関銃x1、装甲厚6〜22mm、速度7.72km/h


ルノーBS 75mm砲戦車
 ルノーFTに75mm短身砲を装備した戦車で、970両が発注されましたが結局第1次世界大戦には間に合いませんでした。大戦間に数量が完成し、その内の一部は1942年のトーチ作戦にて連合軍と交戦しています。
 重量7.2トン、75mm砲x1、その他の諸元はルノーFT戦車と同じ

プジョー軽戦車
 プジョーが製造した試作戦車です。ルノーFTと違って車体前方にエンジンを持ち、車体後方に固定式戦闘室を備えていました。
 重量6トン、乗員2名、37mm砲x1+機関銃x1

ドローナ・ベルビュー中戦車
 ルノーFTの試作車から発展した戦車です。
 重量13トン、乗員3名、37mm砲x1+機関銃x2、装甲厚16mm、速度19.3km/h

1A重戦車
 ジャミィーとサバティアらがFCMで研究した戦車です。後の2Cへの礎となりました。
 重量41トン、乗員7名、105mm砲x1+機関銃x2、装甲厚35mm(最大)、速度5.98km/h

2C重戦車

2C重戦車
 FCMが設計した重突破戦車(Char Lourd)で、1919年に予定されていた大攻勢に投入される予定でした。第1次世界大戦終了までに一応10両が完成しましたが、実際にはドイツから賠償でメルセデス製のエンジンを獲得するまでは活動しませんでした。その後エンジンはマイバッハ製に換装されています。この戦車はガソリンエンジンと電気モータを併用しており、サスペンションは板バネでした。また、多砲塔戦車の走りでもあります。第2次世界大戦には6両が参加しましたが、ドイツ空軍の空襲により破壊されています。なお、シャール(Char)とは戦車を意味します。
 重量68トン、乗員12名、75mm砲x1(前部砲塔)+機関銃x4(前部砲塔、車体左右、後部砲塔に各1挺)、装甲厚45mm(最大)

 

3 ドイツ

A7V突撃戦車

A7V突撃戦車
 A7Vとは戦時省運輸担当第7課(Abteilung 7(Verkehr)des Allgemeinenbzw.Truppen-Departements des Kriegsministeriums.)の頭文字です。ヨセフ・フォルマーが設計し、ホルト牽引車の走行装置を参考としていました。本車は安定性に欠け、足周りが貧弱だったため、不整地突破能力に劣っていました。終戦までに22両が完成しています。
 重量30トン、乗員18名、57mm砲x1+機関銃x6、装甲厚15〜30mm、速度12.8km/h


A7V/U突撃戦車

A7V/U突撃戦車
 A7V委員会がA7Vの欠陥である安定性の悪さと越壕性の悪さを改善するべく設計した戦車です。イギリス戦車を模倣してスポンソンを有する菱形戦車となりました。しかし、完成度はイギリス戦車に劣っていました。
乗員7名、57mm砲x2+機関銃x4、装甲厚20〜30mm、速度12.0km/h


A7V/U2突撃戦車
 スポンソンが小さくなり、車長用キューポラに機関銃を搭載する予定でした。計画で終わりました。

A7V/U3突撃戦車
 機関銃のみを搭載する予定でした。これも計画で終わりました。

K-ワーゲン重戦車
 A7V委員会の要請でフォルマーが設計した重戦車で、車体には77mm砲4門を装備するスポンソンがあり、重量は148トンもあったため、鉄道で輸送する際は4分割できることとなっていました。連合軍占領統制委員会に制作中の2両は破壊されてしまいました。
 重量148トン、乗員22名、77mm砲x4+機関銃x7、装甲厚30mm

LK.I軽戦車
 フォルマーは重戦車よりも軽戦車の大量配備を支持していました。そこで設計したのがこの戦車です。LKとはLeichte Kampfwagen(軽戦車)を意味します。ダイムラーの自動車用シャーシを流用して、エンジンは全面にあり、後部に簡単な円筒型砲塔を有しています。
 重量6.89トン、乗員3名、機関銃x1、装甲厚8mm、速度12.0km/h

LK.II軽戦車
 A7Vの仕様に従ってLK.Iを改造した戦車で、装甲が厚くなり、57mm砲を装備しました。機関銃装備車両もあります。この戦車もダイムラーの自動車用シャーシを流用しています。
 重量8.75トン、乗員3名、57mm砲x1、装甲厚14mm、速度12.0km/h

LK.III軽戦車
 専用シャーシが採用され、旋回式砲塔を車体前方に配し、エンジンを車体後部に設けられました。当初は57mm砲を装備し、後には20mmベッカー航空機用機関砲が搭載される予定でした。結局完成しませんでした。

 

YEN      

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