History Quest「戦史会議室」
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タイトル Re: 伊戦艦対英巡洋艦
投稿日: 2005/05/06(Fri) 22:51
投稿者山家

> この点には異論があります。お説は、巡洋艦(というか、水上水雷艦艇)の戦艦に対する戦闘能力を過大評価されていると思います。
> 以下、理由です。
>
> 1.魚雷は、よほど接近して有利な位置から発射しないと、命中しません。砲弾と違って回避できるからです。昼間の水上戦闘で、戦艦に対して巡洋艦なりその他の水雷艦艇が、魚雷の命中を期待できるような近距離まで接近するのは、よほど数的に有利でない限り困難で、相手に十分な随伴艦がいるときには不可能に近い、と思います。

 魚雷の命中を期待できるような近距離とは、まず具体的にどれくらいの距離を想定されておられるのでしょうか。史実では、3万メートル以上から戦艦の主砲弾が命中した実例は無かった筈です。そして、魚雷の最大射程距離は日本の酸素魚雷以外でも2万メートル近くあります。1万5千メートル内外に潜り込めれば、魚雷は命中を期待できませんか。

> 2.実際に、第二次大戦で、水上艦が発射した魚雷が大型艦に命中して損害を与えているケースは、大半が夜戦でのものです。
> 昼間戦闘でのケースは、(1)ノルウェー沖でのシャルンホルスト、(2)ビスマルク、(3)バレンツ海でのシャルンホルスト、くらいのはずです。このうち、(2)(3)はすでに袋叩きにされた単艦相手にトドメをさすためのものです。(1)の際にも、独の2巡戦には随伴艦がいませんでした。なお、ラプラタ沖海戦でも、英巡洋艦は魚雷を使っていません。
>
> 3.イタリア海軍の基本的戦術は、戦艦は随伴艦なしでは戦闘させず、かつ、夜間には戦闘させない、ということを原則にしていたように思われます。フリート・イン・ビーイングでいくのなら、これでもかまわないわけです。
> イタリア海軍には巡洋艦・駆逐艦は豊富にいますから、英巡洋艦がこれらを振り切って水雷攻撃に有利な位置につくのは事実上不可能だと思われます。

 具体的に伊海軍の基本的戦術を述べた資料を教えていただけませんか。確かに史実では伊海軍は夜戦を避けているようですが、そもそもタラント空襲で大打撃を受けたり、燃料不足になったりで、伊海軍の大型艦の出撃事例自体が乏しく、下手をすると憶測からの間違いになりかねません。更に言うと、夜戦を避ける海軍では、本土と北アフリカ間の通商路保護やマルタ島・ギリシャ本土等への侵攻作戦には使えず、本土防衛にしか役立ちません。それに伊海軍に巡洋艦・駆逐艦が豊富にあるとはいえ、英海軍からみれば、3分の1程です。1対1で刺し違えられてしまえば、すぐに裸にされてしまいます。

> 4.昼間の砲戦なら、ド級艦は巡洋艦に対して圧倒的に有利です。第三次ソロモン海戦は、夜間、反航体勢の両艦隊が、5000m以下の超近距離で砲戦を交わす、という特殊事例なので、昼間戦の参考にすることはできないと思います。また、この海戦で比叡は(探照灯火をつけたため敵の砲撃が集中したため)上部構造に多数の命中弾を受けましたが致命傷はなく、他方の米艦隊のほうは1隻を除いてかなりの損傷を受けています。比叡が沈没に至ったのは1弾で舵(装甲部から外れている)を損傷して操舵不能になったために捕獲を嫌って自軍の魚雷で処分されたもので、戦闘海域の昼間の制空権が米軍にあるのでなかったら楽に生還できていたでしょう。
> ちなみに、この海戦のとき米軍には水雷装備の防空巡2隻と駆逐艦数隻がいましたが、比叡は魚雷は食っていません。

 前にも書きましたが、伊の改装戦艦の主砲は金剛級には及ばず、アラスカ級やシャルンホルスト級程度の主砲なのです。ラプラタ沖海戦で同程度の主砲を積んでいるグラフ・シュペーは、列強の重巡洋艦の中では小型のエクゼターを沈められませんでした。伊の改装戦艦が英重巡洋艦と対戦した場合、同様の事態になると私には思われるのです。1930年代に計画・建造された大型艦で12in前後の主砲を装備した軍艦は、独を除くとアラスカ級のみです。そして、アラスカ級は無駄な建造で役立たずと評されることさえあります。また、192,30年代に仏伊共に小型戦艦の建造を計画したことはありますが、役に立たないとして、前弩級戦艦の代替として建造されたダンケルク級を除いては建造されず、政治的な制限が外されると、即座に15in砲を積んだ大型戦艦建造に走っています。日本も超甲巡は役に立たないとして計画のみでした。これらのことから考える限り、伊の改装戦艦の実力もアラスカ級等とほぼ同程度であることから、そんなに役立つとは思われませんし、重巡洋艦に圧倒的に有利とも考えられないのです。


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