History Quest「戦史会議室」
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タイトル Re^2: 特論;戦場に連れて行かれた人達
投稿日: 2005/09/19(Mon) 22:13
投稿者久保田七衛

>要はa1+b1+a2+b2が「規定の軍役数になっていれば良い」と考えますね。

 なるほど、用語としての「軍役」をより広く捉える立場ですね。研究者でも池上裕子氏は「軍役」をかなり広い概念として用いることを提唱しておられます。以下、『戦国の群像』(1992年)より;
「『小田原衆所領役帳』は知行役・人数着到・出銭という三種類の軍役を各家臣がどれだけの貫高について負担するのかを確定するために作られた。(中略)人数着到というのは、戦争に参陣するときに引きつれていく兵士の数と武装のことで、これが一般にいわれる軍役にあたる。だが、軍役というのは、家臣が宛行われた所領の高に応じて負担する奉公の全体をいう言葉として使う方がよいと思われるので、狭い意味の軍役は陣役とでも名づけて混乱がないように区別した方がよいと思う。」

 私が用いる用語としての「軍役」は(大途御被官の)人数着到にあたる、狭義の方となります(注1)。なぜ、
a軍役内人員(a1戦闘員:a2非戦闘員)+b軍役外人員(b1戦闘員:b2陣夫)
と分類したかと申しますと、ひとつは実態としてのa1とb1の差違よりも、政体の把握度が両者で異なるであろう事を重視したからです。つまりa1+a2と比較し、b1+b2は数量的把握がより困難(と、いうより事実上不可能)です。

、、、ごちょう様とこのツリーを書いてきて、この点が後北条の兵力を分析するときに重要な操作となってくるように思われてきたのです。仮説ではありますが、『北条家人数付』で豊臣方がはじきだした北条方兵力は、具体的にはa1(+a2)に該当する兵力の類推にならざるを得ないのではないか、と考えます(各武将毎の保有兵力を加算するその書式より、また杉山博氏の推定するインフォーマントの性格より)。

注1 ちなみに陣役ですが、後北条の文書用語としては御被官の人数着到以外の意味で使われる場合(『相州文書』一収載天正15年栢山小代官百姓中宛北条氏虎印判文書:むしろ池上氏の「軍役」に近い印象です)があり、用語としての普遍化にやや抵抗を感じます。いずれにせよ広義・狭義の軍役の用語化は「役」の体系の分析の上で重要な作業でしょう。


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