History Quest「戦史会議室」
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タイトル イタリアの潜水艦の悲劇
投稿日: 2005/04/13(Wed) 13:46
投稿者WalkingAircraftcarrier

皆さんこんにちは。
亀レスですみません。
(いや実はあまり資料とてないのですが、振られっぱなしではイタリアが可哀そうすぎるように思いまして。)
元ネタは(株)光栄「艦船年鑑」とデーニッツ「10年と20日間」です。
1.基本データ
イタリア海軍は第2次世界大戦開始時に115隻の潜水艦を保有していて、ソ連に次ぐ第2位の潜水艦大国でした。大戦中の増強は30隻余り、喪失は86隻。「年鑑」によると、指揮・連絡・戦術といった運用面での稚拙さから戦果は芳しくなく、それに反比例する形で損害が増えていった、とあります。
2.外洋戦線
イタリア海軍は、1940年(健気にも)ドイツ軍の作戦指揮下で大西洋で戦いたいと申し入れ、デーニッツを喜ばせます。27隻の潜水艦が大西洋に派遣され、10〜11月に船団攻撃海域に出撃しましたが、戦果はほとんど皆無。「イタリア潜水艦部隊は、旧来の伝統的観点だけに基づいて訓練を受けていたことがわかった。潜水艦は単独で特定海域に配置され、そこで敵を待ち、水中艦として水中攻撃を加えるべく訓練されていた。」で、要するに、護衛艦艇の監視・妨害をかいくぐってつきまっとって攻撃するような機動戦ができない、と。そこでイタリア潜水艦は、いったん作戦から外されて、外縁海域での個艦行動、訓練、欠陥の改造を行いました。そして41年3月に再び船団攻撃作戦に投入されますが、またしても戦果なし。デーニッツもついに匙を投げ、5月以後は船団攻撃海域の外側(インド洋含む)で専ら個艦作戦に従事することになりました。
結局、個艦行動で独航船を攻撃する分にはそこそこの戦果をあげるのに(騎士十字章をもらった艦長が二人いるそうです)、船団攻撃になると、全然使えない。デーニッツに言わせると(同業者に遠慮してかいつもの毒舌を押さえ気味ですが)「イタリア人の性格と軍人としての態度」に問題がある。イタリア人は勇敢さと奉公精神ではドイツ人に劣らないが、船団攻撃ではこれだけでは不十分で、辛抱と粘り強さが要求され、「この点ではイタリア人よりもドイツ人のほうが優れていると思う」のだそうです。
3.地中海戦線
この戦線になると、デーニッツはもう同業者とは思っていないのか辛辣で、数行で片付けています。いわく、「イタリア艦隊と潜水艦部隊は、その兵力からみて味方も敵も予期していたほどの効力を発揮しなかった。……イタリア潜水艦の大部隊は、損失の大きさの割りに戦果が非常に少なかったが、一方の、同じ海域におけるイギリス潜水艦の成績は遥かに良かった。」事態に業を煮やしたヒトラーは41年秋にドイツ潜水艦を地中海に投入するよう命じ、10数隻のUボートが地中海に派遣されました。一方でイタリアの大型潜水艦は北アフリカへの輸送任務に使用されるようになり、輸送専門型の潜水艦まで建造されました。
4.要するに。
潜水艦作戦戦略についての基本的コンセプトの段階で初手から間違っていたために、組織・教育・訓練・造兵・装備・戦術が全部狂ってきて、散発的な戦果はあっても戦争全体の進行にほとんど寄与できないで終った、と。
……ところで、これって、わが帝国海軍の潜水艦とそっくりじゃないか、と思うのは……私だけでしょうか?


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