History Quest「戦史会議室」
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タイトル Re^2: イタリア海軍の仮想敵
投稿日: 2005/05/03(Tue) 11:21
投稿者WalkingAircraftcarrier

山家さん、みなさん、こんにちは。
さんさんと陽光のふりそそぐ連休に、なんで私がイタリア海軍の心配をせにゃならんのかと、そこはかとない不条理を感じる今日このごろですが、この際勢いで続けてみます。資料不足のため、想像の域を出ませんが……

1930年代後半のイタリア海軍の戦略コンセプト(対英仏)は、
(1)イタリア水域は水上艦と空軍力で守る、
(2)長距離型潜水艦で外洋で通商破壊をする、
だったのではないか、と思います。
以下、理由です。

1.まず、イタリア海軍の戦力は確かに英国に大きく劣りますが、ドイツが海軍再軍備(英独協定では英国の35%まで可)をやるので、英海軍は全力を地中海に投入することはできない、という戦略判断があったはずです。
2.イタリアは30年代後半に弩級艦4隻の大改装をやり、速力を27〜28ノットに向上させました。これはクイーン・エリザベス級よりも4ノットばかり速い速力です。もちろん砲力・装甲は弱いですから、殴り合いになったら圧倒的に不利ですが、「自分より強いのが出てきたら逃げてしまう」ことができます。
3.実際に英戦艦が出てきたら、航空攻撃で叩くことが(額面上は)できます。イタリアは30年代後半に主力爆撃機としてSM79を数百機配備しましたが、これは雷撃や対艦爆撃のできる陸攻みたいな機体です。これの行動圏内に敵水上艦艇が長時間とどまることはできないから、イタリア水上戦力(基本的にフリート・イン・ビーイング戦術をとります)と加えれば、イタリア近海及び北アフリカ交通路を守ることは可能である、と。
4.守勢一方の海軍力では戦略的に勝てませんし、抑止力としても不十分なので、攻撃力が必要です。そこで、長距離型潜水艦の大西洋での通商破壊戦を攻勢的に使います。
5.では燃料油はどうするか。(ルーマニアとかソ連とかに頼るのは「希望」にすぎないでしょう。)この点はイタリアは「考えてなかった」のではないでしょうか。というより、「まさか本物の戦争になるとは思っていなかった」のではないでしょうか。「英国との戦争はしたくない。しかし領土は拡張したい。地中海で火遊びをすれば英国との関係が緊張するから、戦備は対英戦に備えなければならない。この戦略環境でこれだけの軍備を備えれば、英国もむりやり戦争にはするまい。」と。ムソリーニはぎりぎりまでヒトラーに「イタリアは戦争準備ができていない」と言いぬいていますし、イタリア軍部も最後まで参戦に反対していますし。
6.(ホントの蛇足ですが)イタリアに限らず、ドイツにしても日本にしても、海軍軍備を拡張するときに、燃料油の心配をした形跡がないのは何故なのでしょうね?どっちも、仮想敵は石油の仕入れ元ですのにね……


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