History Quest「戦史会議室」
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タイトル Re^4: イタリアの潜水艦の悲劇
投稿日: 2005/04/19(Tue) 22:24
投稿者山家

 まず、伊が海軍を整備したのは、国家・軍事戦略的に何を目指していたからなのか、から考えていかないと、話しの根本からずれていくと私には思われます。

 伊海軍は、仏海軍に対抗し、地中海の制海権を確保することを第一に考えて整備されてきました。日本海軍が、米海軍に対抗することを考えて整備されてきたのと同様の考えです。伊海軍が英海軍と戦うことは全く考えられていませんでした。実際問題として、伊と英が戦争に突入した場合、英海軍の海上封鎖により、伊では石油が欠乏し、海軍が張子の虎になることは自明だったからです(史実でもそうなりました)。

 この部分は、私の推論になりますが。伊が潜水艦を大量に整備したのは、対仏戦の際に、潜水艦によって大西洋で通商破壊戦を行うことで、仏海軍を大西洋に引きつけ、地中海の制海権確保を図る目的があったと思われます。実際、そうでも考えないと(英海軍も同様の失敗を犯し、多数の大型潜水艦を失いましたが)、大型潜水艦の活動に不向きな浅海域の多い地中海で、大型潜水艦整備を伊海軍が進めた理由が付きません。

 そして、仏海軍のみと戦うことを考える以上、対船団攻撃を潜水艦で行うことの重要性は低下します。仏海軍の規模は伊海軍とほぼ同じなのです。地中海の制海権は伊海軍が握ろうとするのが第一目的と考えるならば、敢えて大西洋で危険な船団攻撃を行うよりも、独航船を狙って、仏海軍の戦力を分散させたほうがより効果的だからです。

 しかし、史実では戦うつもりが毛頭無かった英と、伊は戦うことになり、伊潜水艦は船団攻撃を行うことになります。独潜水艦はWWTの戦訓を生かし、かつ対英戦の準備を整えていたのに対し、伊潜水艦にはそのような準備がありませんでした。このことから考えると、伊潜水艦の成績が、独潜水艦に及ばなかったのは、ある意味必然のような気がします。しかし、だからといって、伊潜水艦を責めるのは、上層部の失敗(そもそも伊海軍は対英戦の準備をしていなかった)を、現場に押し付けているような気がし、私としては首を傾げます。

 更に言うと、史実の伊海軍にとって、伊潜水艦を商船攻撃に使うことよりも、北アフリカの枢軸軍への補給を維持することのほうが、より重要な任務ではないでしょうか。そして、伊は輸送船だけではなく、ガダルカナルにおける東京急行ではありませんが、巡洋艦まで動員して、北アフリカの枢軸軍への補給維持に苦労していたのです。そして、前回も書きましたが伊の恒常的な燃料不足(TACTICS51号の瀬戸利春氏の記事によると、1941年10月末の残燃料は伊海軍の行動1週間分にも満たない3万tに落ち込み、北アフリカへの補給維持等のために大型艦を出撃させるのは、ほとんど不可能になっていたとか。このような状況からしても、伊潜水艦が史実より活発に行動するというのは、困難だと思われます(もし、史実より少し燃料が多いくらいだったら、潜水艦よりも、補給不足に苦しんでいる北アフリカへの補給維持にその分の燃料は回されるでしょう)。


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