History Quest「戦史会議室」
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タイトル PanzerDivisionの訳語
投稿日: 2002/08/26(Mon) 03:37
投稿者Giftzwerg

みなさん こんばんは

ドイツ軍のPanzerDivisionの訳語ですが、
装甲師団、機甲師団、戦車師団全部あります。 
翻訳者によってまちまちと言ってしまってよいでしょう。
今、手元にある本の中から例を挙げてみましょう。

英語から訳された本の場合はだいたいが機甲、または
戦車のどちらかになっています。
機甲師団(軍団、軍)になっているものの例として
 ・史上最大の作戦(コーネリアス・ライアン)
 ・ヒトラー最後の戦闘(コーネリアス・ライアン)
 ・電撃戦(レイ・デントン)
 ・ヒットラーと国防軍(リデル・ハート)
戦車師団(軍団、軍)になっているものの例として
 ・バルジ大作戦(ジョン・トーランド)
 ・狐の足跡(デイヴィット・アーヴィング)
等があります。

また、Trajanさんが既に指摘されているようにサンケイ・
バランタインの第二次世界大戦ブックスは初期の頃は
機甲師団(軍団、軍)になっていますが、再版時に
装甲師団(軍団、軍)に変更されています。

英語の翻訳者は機甲または戦車、旧軍出身で戦後米軍に
協力していた人(加登川幸太郎氏や宇都宮(参謀副長)
直賢氏など)は機甲を使うようです。

一方、ドイツ語翻訳者(本郷健氏や松谷健二氏等)は、
装甲師団(軍団、軍)を使っています。
例えば、
 ・一連のパウル・カレルもの
 ・電撃戦(グデーリアン)
 ・失われた勝利(マンシュタイン)
 ・擲弾兵(クルト・マイヤー)
 ・第二次大戦叢書
などです。
朝日ソノラマ文庫の
 ドイツ戦車軍団(メレンティン)
 ノルマンディのロンメル(ルーゲ) 
等も「装甲」になっています。
前記のように、サンケイ・バランタインの第二次世界大戦
ブックスが「装甲」に修正されたり、ウォーゲーム関係も
「装甲」が主流だったため、70年代後半から80年代は
「装甲」で統一された感がありました。

その後、富岡吉勝氏や高橋慶史氏など、主に大日本絵画社
で活動されている新世代の戦史研究家の方々は戦車師団
(軍団、軍)を使用しています。
例えば、
 ヒットラー・ユーゲント(フーベアト・マイヤー)
 ラスト・オブ・カンプグルッペ
等です。

また、同じ本の中でもPanzerの訳語が異なることもよく
あります。
前記の旧軍出身の翻訳者の方の場合、師団、軍団、軍
など、戦車だけでなく機械化歩兵や砲兵なども統合した
編成の場合は「装甲」/「機甲」を用い、旅団、連隊、
それ以下の単独兵科で編成された部隊の場合は「戦車」
を使用しています。 このパターンはあちこちに踏襲さ
れています。

大日本絵画社系の戦史研究家の方々の場合、Panzerは
ドイツ語では「戦車」の意味があるので戦車師団
(軍団、軍)という訳語を用いていますが、Panzer
Grenadierには「機甲擲弾兵」という訳語を用いています。

極めつけは、補給戦(クレヴェルト)です。
この本の日本語訳には戦車、機甲、装甲(師団、軍団、
軍)の訳語が混在しています。
この本の翻訳者の佐藤佐三郎氏は本来経済が専門の方
で、訳文自体は特に読みにくいわけではありません。
上記のように軍事、戦史の専門家の間でも統一がとれ
ていないので翻訳者を責めるのは酷な気がします。

----------
以上のような状態なので、私はWW2ドイツ軍の戦記
ものを読むときには、「戦車」、「機甲」、「装甲」
のどれが出てきても、(日系ドイツ人として(笑))
脳内ですべてPanzerに逆変換して読んでいます。
一応、どの訳語にもそれなりの理由がありますし、
もう慣れました(泣笑)


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