History Quest「戦史会議室」
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タイトル Re^2: 欧州諸国の海軍に空母は必要か。
投稿日: 2004/05/31(Mon) 23:12
投稿者山家

 こちらで、まとめてのレスを失礼します。

 空母は無いより有った方がいい、というのは、私も否定しません。確かに戦史上、空母があれば、という場面は、マレー沖の英艦隊等、枚挙に暇がありません。しかし、その保有目的と費用対効果の点で、欧州諸国の海軍に本当に空母は必要不可欠なのか、と思われてならないのです。

 空母が無ければ、戦闘の際にそもそも航空支援が期待できないという状況を想定して、空母を保有する軍備を第一に整備しなければならないのは、太平洋上で戦うことを想定した日米両海軍や世界各地の植民地(とそれをつなぐ海上交通路)保護のために戦う必要のある英海軍位で、それ以外の欧州諸国の海軍が、その必要があるとは思えないのです。独海軍はバルト海や北海の制海権確保、仏伊の海軍は地中海の制海権確保を第一に考えて整備されています。共に陸上の航空基地からの航空支援を、ある程度は当てにできます。

 それにやや戦術的な話になりますが、対艦攻撃を第一目的にして整備された航空隊を持っているのは、米英日の三国(それも海軍航空隊)のみで、それ以外の諸国の空軍は、対艦攻撃を第一目的にして整備されていません(例えば、陸上攻撃機という機種を保有しているのは、日本海軍のみ)。このような状況で、航空機による対艦攻撃については、陸上からの航空基地からの航空支援と対空射撃で対応できると考えるのは、当時の欧州諸国の海軍整備について、誤った考えでしょうか。マレー沖海戦まで、日米英の海軍軍人の多数派でさえ、航空攻撃のみで航行中の戦艦が沈むことはありえない、と考えていたのです。

 それに、空母を戦力化するためには、空母を建造するだけでは済みません。艦載機を開発、製造したり、空母から発着艦できる技能を持った搭乗員を育てたり、といろいろと費用が掛かるのです。陸上機を転用して、艦載機にすればいい、とおっしゃられるかもしれませんが、航空機史上、陸上機から名艦載機になった例が幾つあるでしょうか。そう多くは無かったと思います。空軍機を、空母に搭載するのも、いろいろと問題があります。例えば、空母の艦長の命令と、空軍司令部の命令が矛盾した場合、どちらが優先されるのでしょうか。

 更に、空母の問題点として、飛行甲板の中央に1発の爆弾が命中した等で、艦載機の発着艦が不可能になれば、その海戦においての航空支援を失うことがあります。ビスマルク出撃時に、独空母が完成して随伴していた(勿論、戦力化済みで)場合でも、英海軍はまず空母を叩いて、航空支援を封じ、それから、ビスマルクを攻撃すれば良いだけで、史実より多少損害は増大するでしょうが、最終的にビスマルクが沈むことは変わりないと思われます。飛行甲板に装甲を張る等、ある程度の対策は講じられますが、地上基地からの航空支援と比較すると、その抗堪性が劣る(例えば、ミッドウェー海戦において、ミッドウェー基地に対して空襲が加えられましたが、基地の航空機運用能力に重大な損害を与えていません。これが、空母でしたら、沈没しているでしょう。)のは否定できません。

 それらを考えると、本当に欧州諸国の海軍に空母は必要なのか、と思われてならないのです。


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