History Quest「戦史会議室」
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タイトル Re^11: 欧州諸国の海軍に空母は必要か。
投稿日: 2004/06/11(Fri) 20:36
投稿者ウィリー
参照先http://homepage3.nifty.com/minea/

前の発言にはいくつかひどいミスがあったようなので
訂正しておきます。

・全金属単葉のフルマー:イラストの感じからすると、
全金属じゃなさそうですね、あれ。
・E−16:アイ・エルじゃなくてただのアイですね。

で、本題。

まずは逐次的なRESをつけます。
私の考えをまとめるのはその後にしましょう。

>例えば、当時の構想として、独海軍は、ティルピッツよりも、グラーフ・ツェッペリンを優先すべきだったことが正しかったといえるでしょうか。

この部分で根本的に意見が合わないようです。
私は「結果として間違っていたなら間違いである」と評価します。
結果論で言えば、航空機の傘の下にない水上艦は何の役にも立ちませんでした。
例外は(いつものことながら)夜戦訓練を徹底的に積んでいた日本海軍ぐらいのものです。

同様に、欧州海軍は、水上艦の戦術を夜戦主体とするとして
徹底的な訓練を行うのでない限り、
常に航空機の傘を得る手段を施しておくべきだったのです。


>  そんな海軍航空隊を保有するよりも、空母を保有した方がいい、とのことですが、空軍との密接な協力というのは、そんなに絵空事なのでしょうか。

現に史実ではどの国でも絵空事でした。
これ以上の証明が必要だとは思いません。

>  次に、航空機の運用ですが、航空機の通信・運用には無電が必要不可欠です。例えば、敵偵察機を追い払おうとしたりするのに、戦闘機を母艦から誘導しないといけないのではないでしょうか。完全な無電封鎖をして、艦上機を運用するのは困難ではないでしょうか。

敵偵察機を追い払うために誘導する。
レーダーのない時代に、空中にいる航空機と艦隊と、
どちらがより偵察機の位置を正確に捉えることが出来るでしょう?
しかし、それは本質的な問いではないでしょう。
本質的な問題は、偵察機を運用するのにいかにして偵察機を誘導するか、です。

しかし、この問題はきわめて簡単な答えが存在します。
偵察機が電波を打つからといって艦隊の位置がわかるわけではありません。

#全周索敵を行っている偵察機が、同時に電波を打つのならともかく。

敵を発見した偵察機が電波を打っても敵に知られる訳ではないのも同様です。
わかることはせいぜい敵に見つかったと言うことだけですが、
そんなことは敵が偵察機を見つけた時点でわかることなのです。

どうやって偵察機は艦隊に帰投するのか?
味方艦隊を「あのあたりにいる」と知っているのに
上空から発見できない偵察機がどこにいるかわからない
敵艦隊を見つけられるわけがないのです。
だから、艦隊が無電を打つ必要があるのはよほどの緊急事態だけであり、
そのような緊急事態が発生しているなら、とっくに艦隊は敵に見つかっているのです。

>  それに、上記のように水上機だからといって軽んじることはできません。なお、偵察に1隻の水上艦から大量に運用するということは、少なくとも日本海軍は構想していませんでしたし、私も不利だと思います。何故なら、水上機は回収に手間隙が掛かるのです。ミッドウェー海戦等でも利根等の1隻の水上艦からは、2機しか偵察に発進させていません。それなら、何故、利根級が建造されたか、というと水爆を搭載するつもりだったのです。しかし、開発に失敗したため、搭載されませんでした。

これは、非と理を共に説いています。
水上機が回収に手間取るのなら艦上機が索敵するほうがより効果的です。
水爆がまともな性能をもてなかったのならなおさら艦上機は必要です。
水上機の実用性が低いのなら艦上機を運用すべきであり、
艦上機を運用するには空母が必要なのです。
逆に、水上機が実用的であるならばなぜ空軍を重視する必要があるでしょう。
水上機母艦を大量に保有することでもやはり航空機の傘は得られるはずです。

が、史実に照らす限り「水上機母艦は空母にしかず」だったのです。

>  そして、航空巡洋艦ですが、航空戦艦と同様に中途半端な性能で、わざわざ建造する必要はないと思います。まだ、水上機母艦を建造した方がいいと思います。

水上機母艦と「週刊カサブランカ」的実験用空母と
どれほど建造費が違うというのですか?
そもそも、巡洋艦の任務として偵察を行わせるつもりなら、
偵察機を搭載するほうが有利なのです。
偵察用の巡洋艦なら、より多くの偵察機を搭載すべきですし、
偵察機をたくさん積めばそれは自然に航空巡洋艦になります。

#レーダーを考慮に入れれば話はまた変わりますが。

初期の空母は自衛用の艦砲を搭載していました。
航空巡洋艦は自衛用の艦砲を搭載した水上機母艦とも言えます。

−−−−

とりあえず次の2点はきちんと分けて思考してもらわないと
話がまとまるわけがありません。

「30年代欧州海軍軍人が持っていた情報から判断して」
保有すべきであったかどうか。
「30年代欧州軍人が空母を保有しないために最大限努力したとして」
保有すべきであったかどうか。

この二つは全くの別物です。
前者であれば史実での制約をはずす場合(全部史実通りなら持てるわけないのですから)
海軍の努力ではずすことが可能な制約のみをはずすことを考えます。
後者であるならば海軍と空軍が一致協力して空母を保有しないために
努力するという協定が可能である、という前提を最初に置いていることになります。

で、空母を保有しないために海空軍軍人が真摯に協力する、
などという事が現実にありうる事として想定できるでしょうか?

しかし、この問題はここまでにします。
海空軍軍人が空母を保有しないために最大限努力したとしましょう。
では、それで空母を保有していた場合と同等の効果を上げるために
どれだけの労力が必要であったのか?
これを提示するのでなければ空母を保有すべきであったかどうか
判断のしようがありません。
言い換えるなら、具体的に空母の建造費を何に費やして
(たとえば、マジノ線1kmの予算で戦車が何両買える、と言った具合に)
それが実際に空母より有益であることを示すのでない限り、
空母を作らない方が良かったとは言えないのです。

「30年代海軍軍人の目から見て」何が見えるか私は知りません。
はっきりしていることは、史実の結果を見る限り、
航空機の傘を得られない水上艦など足の悪いアヒル同然だった、ということです。

では、空母と同等の航空機の傘をどうやって水上艦に与えるのですか?
そのために必要な費用が本当に空母を建造するより安上がりなのですか?

この答えがない限り、空母を建造すべきではなかった、
という結論はどうやっても出てくるはずがないのです。
もちろん、その逆の結論が出る事もないのですが、
史実でイタリア海軍が空母を建造する気になった事を考えると、
この問いの答えは明確であると、私には思えるのです。


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